限定承認と先買権制度

限定承認と先買権制度

被相続人に負債がある場合、プラスの財産よりも明らかに負債の方が大きいとわかっていれば、「相続放棄」を検討しなければならないでしょう。様々な事情もあるとは思いますが・・。
実際に相続放棄申立件数は年々増加しています。
平成26年には年間19万件を超え、約20年前から見ると3倍から4倍近くにも膨れ上がっているとの事。ですから相続放棄という制度があることについては、皆さんもよくご存知だと思います。
それに比較して年間800件程度しか申立てがないのが「限定承認」という制度です。限定承認は、一言で云うならば「プラス財産の範囲内でのみ債務を返済する」というもので、相続により債務も全て承継することになるのですが、責任は相続した財産の範囲内でのみ負う。つまり負債の方が多かったとしても、相続人自身の財産からは持ち出して払う必要はないわけです。清算後にプラスの方が多ければ手元に残ります(みなし譲渡所得税で減ってしまう可能性あり)。ですからこの制度は借金がいくらあるかわからない、財産とどちらが多いのかわからないといったときに有効だと考えられます。しかし、上記のようにほとんど利用されていない。合理的な制度だと思うのですが・・。
その理由は、共同相続人の全員が共同してのみこれを行うことができるとされているうえ、非常に手続きが複雑で時間もかかり負担が大きいからなのです。その手続きの詳細についての説明は今日は割愛しますが、それ故に限定承認を検討からはずしてしまうという例は非常に多いと思います。しかし、限定承認をした相続人だけが行使できる「先買権」などを利用することで、相続人が再起を図る道を残せる場合などがあるかもしれません。先買権という制度は、限定承認をした場合の債務弁済のための原則的換金方法である不動産競売に代えて家庭裁判所が選任した鑑定人の鑑定額で、限定承認をした相続人が優先的に買い取ることができるというしくみです。競売になってしまえばどうしても必要となる自宅や事業用財産も手放さなければならない状況に陥る可能性は高くなります。どうしても自宅だけは残したい、事業を続けるための不動産(工場)だけは残したいというような場合には検討してみる価値が充分にあると思うのです。このように限定承認を頭から外すのではなく、状況に応じて検討してみることが大切だと思います。

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