相続コラム 予備的遺言で更なる安心を
予備的遺言でさらなる安心を
- 万が一に備えて、予備的な遺言を遺しておく
万が一のことですが、遺言によって財産を受け取るはずの方が、不幸にして遺言者よりも先に亡くなってしまうということがあるかもしれません。この場合には、その亡くなってしまった方に遺すとした部分の遺言は無効となってしまうのが原則です。
したがって、その方に遺すとした財産については、他の相続人(亡くなった方に代襲者がいれば含めて)で遺産分割協議を行うことになります。せっかく遺言で財産を遺す方法について決めて置いたにもかかわらず、当初の意図とは違った形で相続されることとなり、遺言者の本来の目的が全く反映されなくなってしまう可能性もあるでしょう。
更にその財産の分割をめぐって相続人の間で争いが生じる心配もあります。もちろんそのような事態が起きた段階で、新たに遺言を作成できれば間違いないのですが、手間と費用の問題、そして何よりも、その時の遺言者の健康状態です。
例えば認知症の発症など、新たに遺言書を作成することが困難な状態になってしまっていることも考えられます。そこで実務では状況に応じて、予備的な遺言を入れる提案をしています。
具体的事例
遺言者は長男家族と同居、長男は病弱で収入面も含めて将来に不安があるので、家族のためにも出来るだけの財産を遺してやりたい。遺言者自身も長男の嫁には、日常的な介護で大変世話になっている。一方、次男は実家には寄りつかず浪費癖もあり心配している。
- 予備的遺言を入れる前の遺言
長男に自宅の土地建物2,100万円、次男に預金700万円を相続させる。(次男には遺留分を確保し、生活の基盤となる自宅不動産は全て長男家族に遺したいのが遺言者の本来の目的)
- 万が一、長男が先に亡くなってしまったら?
長男が相続するはずの自宅土地建物部分の遺言は無効、無かったことになります。(長男の代襲者である孫に、そのまま相続されるわけではありません。)したがって、指定が無くなった自宅土地建物については相続人である次男と代襲相続人である孫によって遺産分割協議が行われることになります。孫が相続できるように協議が整えば良いのですが、相続分が少なく浪費癖のある次男が簡単に同意してくれるでしょうか?
予備的遺言を入れた後の遺言
長男に自宅の土地建物2,100万円、次男に預金700万円を相続させる。ただし、遺言者よりも前に又は同時に長男が死亡していた場合には、長男が相続するはずの土地建物2,100万円は長男の妻●●に遺贈する。(または長男の子●●(孫)に相続させる。)
※記載方法は例として簡略化しています。実際の記載方法とは異なります。
このように予備的遺言を入れておけば、次男と孫の間で遺産分割協議をする必要はありません。万が一の場合にも、遺言者の本来の目的通りに、長男家族に自宅を遺すことが出来るのです。
特に財産を渡したい人が高齢の場合(配偶者や兄弟姉妹)や病弱な場合等には入れておくと安心感が増します。不慮の事故等も無いとは言えないのでケースによっては検討することが必要だと思います。
但し、あまりこだわり過ぎてしまうと混乱してしまいます。状況は変わるものです。全ての状況の変化に対応できる完璧な遺言はありません。ですから実務では、あくまでもケースに応じて提案しています。大切なのは現時点の状況で最善のものを作成しておくことですね。
参考にしていただければ幸いです。